
視力の衰えた愛犬が安心して暮らすためにできること【獣医師監修】
視力が衰えたり、視力を失ったりした愛犬が暮らしやすい生活をかなえるには、飼い主さんのサポートが欠かせません。犬は嗅覚がと…
気温が高くなってくると、熱中症対策として夕方や夜間に愛犬の散歩をする人も多いでしょう。でも、夕方のごはんを与えたすぐ後に愛犬のお散歩に行くことは非常に危険です。特に、ごはんを一気に食べてしまうタイプの愛犬、そして、お散歩に出たら思い切り走るタイプの愛犬、散歩に興奮してしまうタイプの愛犬は要注意。それは、食後すぐの激しい運動が愛犬の命にかかわる病気の原因のひとつとなるからなのです。
「胃捻転・胃拡張症候群」という病気を聞いたことがありますか?大型犬の飼い主さんなら聞いたことがある方は多いかもしれません。
この病気は、元気な愛犬に突然発症し、致死率の高い病気です。詳しくはまだわかっていないこともありますが、なんらかの理由で胃の内容物の発酵がすすんでガスが発生。そのガスが胃の中にどんどんたまっていくことで「胃拡張」が起こります。どんどん拡張していった胃は、やがて周囲の血管や時には他の臓器をまきこみながら、ぐるりとねじれてしまって「胃捻転」と呼ばれる状態になるのです。
ねじれの程度にもよりますが、胃がねじれると、胃の入り口「幽門」と出口「噴門」がふさがれてしまいます。すると、胃の中でどんどん作られるガスの逃げ場はなくなり、胃の中がガスと胃液でさらにパンパンに。胃を含めた周囲の臓器への血流は滞り、さらに全身の血流にも影響が及んで「ショック状態」に陥り、治療を受けなければ数時間で死亡してしまうのです。
胃が拡張し、捻転してしまう原因として知られていることのひとつが「食後の過度な運動」。そして、食事や水を急いで過剰に摂取してしまうことも原因と言われています。
昼間が暑い時期は、夕方から夜の時間帯に散歩をする、というご家庭はたくさんあるでしょう。でも、夕方、たくさんごはんを食べて、水をいっぱい飲んで、「さあ、運動だ!お散歩行くぞ!」と走ってお散歩に行く。帰ってきてまた水をがぶ飲み…そんな生活スタイルは大変危険だと考えましょう。
実は、胃拡張や胃捻転を特に起こしやすいタイプの犬がいます。それは、グレートデンやジャーマンシェパード、そしてゴールデンレトリバーといった、胸郭の深い超大型犬や大型犬のわんちゃんたち。
とはいえ、柴犬のような中型犬やダックスフントなどの小型犬であっても起こる可能性がないわけではありません。「うちの子には関係ない」などとは考えないようにしましょう。
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犬が胃捻転を起こした場合、多くのケースでは、食後数時間の間で、おなかがパンパンに膨らんできます。時間とともにお腹が大きくなっていくほか、とにかく強い吐き気を催します。
げっぷを何度もし、よだれをたくさん垂らして、気持ち悪そうにしたり、吐こうとしたりしているのに何も出てこない、吐くしぐさをしするたびに白い泡ばかりたくさん出てくる、というのも特徴的な症状。
この状態が続くとやがて、ぐったりしてきて、舌の色が青っぽく、さらにすすむと白っぽくなりショック状態となってしまいます。
犬の胃拡張・胃捻転症候群は、発症すると数時間のうちに一気に重篤な状態にります。夜、ちょっとおかしいかな?と思って、そのまま様子を見ていると、みるみる元気がなくなって、翌朝には亡くなってしまうことも少なくありません。夜間であっても必ず緊急受診をして、処置を受けるべき病気です。異常に気づいたら、とにかくすぐに、かかりつけの病院や救急病院に連絡を。
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まずは、速やかにお腹に溜まっているガスを抜く必要があります。皮膚の上から胃に向かって針を刺したり、可能な場合は口から胃へ向かってチューブを入れたりして、ガスを抜きます。さらに、輸液をはじめとした、ショック状態に対する緊急処置も同時に行います。
その後は手術です。開腹手術を行い、胃のねじれを元にもどさなくてはなりません。ねじれていた時間が長かった場合やねじれ具合によっては、胃の一部や脾臓が大きなダメージを受けている場合があります。ダメージが大きい時には、胃の一部や脾臓を摘出することになります。さらに、ねじれの再発を防ぐために、胃をお腹の中で固定するのが一般的です。
この病気の治療は時間との勝負。しかし、重症の場合や治療が遅れた場合は、適切な処置を行ったとしても、亡くなってしまう場合もあります。胃拡張・胃捻転症候群は、それほどまでに深刻な病気なのです。
この病気にかかりやすいといわれている大型犬や超大型犬は、特に普段から予防に気を付けておく必要があります。フードを早食いさせないこと、フードを食べた後に水をがぶ飲みさせないこと。そして、食べたあとすぐに運動しないようにすることが必要です。
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特に夏場は、日中の散歩は熱中症やアスファルトによる足のやけどの心配があるため、気温の下がった夕方以降にお散歩をするご家庭も多いでしょう。夜の散歩は、できれば食事の前に行くことをおすすめします。
やむを得ず夕食後に行くのなら、決して夕食の直後には行かないように。夕方の食事を早めの時間帯にしておき、朝しっかり食べるようにして、夕食の量は控えめに。さらに、食後3時間ほどあけてから、ゆったりとしたお散歩に出るようにしましょう。
大型犬や超大型犬でなくても、胃拡張や胃捻転を発症しないとは限りません。どんな犬種でも、食事はできるだけゆっくりとって、食後は激しい運動は避けてのんびり過ごしましょう。
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こいぬすてっぷに所属している獣医師チーム。臨床経験が豊富な獣医師により構成されています。獣医療の知識や経験を生かし、子犬育て、しつけに関わる正しい知識をわかりやすくお届けしていきます。
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