
シャンプーが苦手な犬のための練習方法【獣医師監修】
シャンプーが苦手な愛犬の体をシャンプーするのは本当に大変でストレスが大きいもの。愛犬も飼い主さんも疲れ果ててしまう大仕事…
「犬がブラッシングを嫌がる」というのは、実は犬にとって自然なことです。ブラッシングは犬が本来慣れ親しんでいる行動ではないからです。犬の目線で考えると、ブラッシングには「体に触られる」「道具を使われる」「慣れないことをされる」という3つのハードルが見えてきます。愛犬がこれらを受け入れられる状態をつくり、犬が嫌がらない楽しいブラッシングを目指しましょう!
犬のブラッシングは、毛並みを美しく整えることはもちろん、毛に付いたノミ・ダニや汚れを落としたり、血行を良くして毛の生え変わりを促し、皮膚を健やかに保つことで、皮膚炎を起こしにくくしたりするためにも必要です。
特に犬には換毛期があり、春には夏に向けて毛量を減らしたり、秋には冬に備えて毛量を増やしたりするため、抜け毛が多くなります。
犬に抜け毛が付いたままでは、不衛生であるだけでなく、新陳代謝が妨げられたり、体温調節がしづらかったり、蒸れてしまって皮膚炎を起こしたりすることもあるので、換毛期には特に念入りにブラッシングを行いましょう。
また、ブラッシング中に犬の体全体を触ることで、できものなどの病気の徴候を見つけたり、傷や炎症といった皮膚の異常をいち早く発見できたりすることもあります。
他にも、ブラッシングはスキンシップを通した犬との楽しいコミュニケーションでもあり、信頼関係を確認する機会にもなります。
できるだけ毎日ブラッシングを行い、愛犬の美と健康、そして飼い主さんとのよい関係性をキープしましょう。
犬のブラッシングは大切ですが、犬本来の習性にはない行動なのので、ブラッシングを嫌がる犬がいるのも当然です。
ブラッシングの練習では、いきなりブラシを使うのではなく、まずは犬がブラッシングを受け入れられるよう心身の状態を整えてあげましょう。犬がブラッシングを嫌がらなくなる秘訣は練習前の準備にあるのです!
犬のブラッシングは一定の時間、体全体を触りながら行います。そのため、ブラッシングを受ける犬は、体に触られることに慣れていることが必要です。
もっと言えば、体に触られることを「うれしいこと」だと思っていることが理想です。
しかし、体中を触るという行為は、犬本来のコミュニケーションにはありません。飼い主さんといえども、体中を触られることを愛犬が受け入れてくれるかどうかは、愛犬の性格にもよるのです。
そこで、ブラッシングの練習を始める前や、ブラッシングを嫌がる様子が見られた時には、愛犬が様々な体の部位を触られることに慣れているかどうか確認しましょう。
もし、苦手な部位があれば、もう一度手で触る練習からのスタート。無理やりブラッシングしようとしないようにしましょう。
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※犬の各部位を触る練習の方法は、『 こいぬすてっぷ』生後3ヶ月編でも詳しくご紹介しています。
ブラッシングの道具そのものが、犬にとってブラッシングが嫌な理由になる場合もあります。
ブラッシング専用のスリッカーブラシやコームなどは、人間にとってはブラッシングの道具でも、犬にとっては恐いものだったりおもちゃだと勘違いしたりするなど、様々な受け止め方をします。
初めてブラッシングの道具を使う際には、いきなり愛犬の体にあててブラッシングしようとせずに、道具を愛犬に見せてみて、愛犬の様子をよく観察しましょう。
愛犬がブラッシングの道具を怖がっているようなら、しばらくは道具を部屋の中で愛犬の目に入る場所に置いておくなど、徐々に慣れさせることも必要です(『 こいぬすてっぷ』生後5ヶ月編でも解説しています)。
ブラッシングをするタイミングもとても大切です。
ブラッシングは多くの愛犬が得意でない行為。
遊びや散歩の後や食後30分ほど経った時など、愛犬の心が満たされていて、リラックスしているとき、休憩したくなる時間帯に、ゆったりと行うとやりやすいでしょう。
ブラッシングに慣らしていくための練習は、できれば生後2〜4ヶ月ごろの恐怖心や警戒心が芽生える前の時期から始めることがおすすめですが、その時期を過ぎていても丁寧に練習していけば大丈夫です。
最初はごく短時間で切り上げ、ブラッシングを受けることに慣れさせます。優しく声をかけながら、また、時にはご褒美のおやつをあげながら、犬を撫でている合間に少しだけ、犬が嫌がらない場所をそっとブラッシングしてみてください。
おとなしくできれば、犬にご褒美をあげて「ブラッシング=うれしいこと」と覚えさせましょう。
うまくいけば、少しずつブラッシングする範囲を広げていくようにしてください。優しく名前を呼んであげたり、「いい子だね」などと褒めてあげながら進めていくのがおすすめです。
犬が体に触れられることにもブラッシングの道具にも慣れ、タイミングが整ったら、いよいよブラシを使って本格的にブラッシングのスタートです。
犬のブラッシングは、専用の道具を使って行います。いずれもペットショップや量販店で販売されていますので、必要に応じて少しずつそろえていきましょう。まずは、ブラッシングに使う代表的な道具とその特徴をご紹介します。
<スリッカーブラシ>
くの字型の針金が付いたブラシ。抜け毛を取り除いたり、もつれをほぐしたりするのに適している
<ピンブラシ>
先端に丸い太めの球が付いていて皮膚を傷つけにくいブラシ
<コーム>
金属製のクシで仕上げに毛並みを整えるために使う。粗目と細目がある
<獣毛ブラシ>
豚や猪や馬の毛でできたブラシ。静電気が起きにくく、埃を取り除くのに適している
<ラバーブラシ>
ゴム製のブラシで皮膚へのマッサージ効果もある
これらは犬の被毛の種類に合わせて適切なものを選びます。
例えば、トイプードルやパピヨンといった長毛種ではスリッカーブラシ、ピンブラシ、コームがおすすめ。
パグや柴犬のような短毛種では獣毛ブラシやラバーブラシやコームが使いやすいでしょう。スリッカーブラシも使えます。
また、ダックスフンド(ワイヤー)やワイヤーフォックステリアのようなワイヤー種ではスリッカーブラシなどがよいでしょう。
愛犬にどの道具が適切かわからないときは、動物病院やトリミングサロンで相談して選びましょう。
犬のブラッシングは、できた毛玉をほぐすため…ではなく、毛のもつれを作らないためにするもの。
毛玉ができてしまうと、ほぐすのに時間がかかり、犬が不快な思いをします。すると、犬はブラッシングが嫌なものになってしまいます。
一度に全部できなくても構いません。少しずつでもいいので、毎日ブラッシングを行いましょう。
1.毛玉があれば、手でもんでほぐす
2.スリッカーブラシや獣毛ブラシ、ラバーブラシで「毛先」のもつれや抜け毛を取り除く
3.「根元」にブラシを通す(長い毛は上側の毛を持ち上げ、下側の毛の根元から梳かす)
4.コームで毛並みを整える
まずは、背中や腰など、犬にとって触られても嫌ではない部位からはじめましょう。
背中、腰→体の側面→首や胸→お腹→頭→足先や耳の順がおすすめです。特に首の周り、足の付け根など毛玉ができやすい部位は念入りにしてください。
犬の皮膚は人間の1/3ほどの薄さで弱いため、ブラシは力を入れずに軽く持ち、やさしく少しずつブラッシングします。
スリッカーブラシは、愛犬に痛い思いをさせないよう、角度や力加減を飼い主さんの腕で確かめてから使いましょう。
※ブラッシングを嫌がる場所の克服についてはこちらの記事でも紹介しています。
→ 「そこは嫌…!」ブラッシングを嫌がる犬、苦手部位の克服方法とは?
ブラッシングでは、決して無理強いをしてはいけません。「ブラッシングで痛い思いをした」「毛玉がありブラッシングで長時間拘束された」などの不快な経験をして、犬がブラッシングを苦手になることも少なくありません。最初から完璧を目指さず、犬の状態を整えて、犬の様子を観察しながらゆっくり進めることが、楽しいブラッシングへの近道です。 こいぬすてっぷでは、「子犬が苦手な部位を触る練習」や「無理なく進められるブラッシング方法」についてより詳しくご紹介しています。ぜひお問合せください。
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こいぬすてっぷに所属している獣医師チーム。臨床経験が豊富な獣医師により構成されています。獣医療の知識や経験を生かし、子犬育て、しつけに関わる正しい知識をわかりやすくお届けしていきます。
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