
犬に煮干しを与えてもいいの?与えるときの注意点は?
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「犬の食事は味付け不要」とはよく言われます。しかしこれは、犬の体に塩が要らないという意味ではありません。適量の塩は犬に必要不可欠です。健康を守るつもりで塩分を控えすぎると、逆に愛犬の健康に害を及ぼすこともあるのです。今回の記事は、犬への塩分の与え方についてです。
塩分は犬の生命維持に不可欠です。
いわゆる塩、つまり食塩はナトリウムと塩素からできています。これらは、体液や体の組織の構成要素であるだけでなく、神経刺激の伝達、栄養素の取り込み、老廃物の排泄、水分代謝など、実に様々な機能があるのです。
上述のように、塩は犬の体の中で大変重要な役割をもっています。ですから、塩分を含まない食事を続けることは、体に必要なナトリウムの欠乏を招き、犬の健康を害することにつながります。
犬の健やかな体作りと塩分の問題が取り上げられるときは、塩分の過剰摂取がクローズアップされがちですが、塩分不足も体に深刻な影響を与えることを知っておきましょう。
人では昔から、ナトリウムの多量接種は高血圧のリスクを高めるとされてきました。その一方、腎機能の正常の犬では、高ナトリウム食で血圧が明らかに上昇することはなかった、との国内での報告があります。
※参考文献
正常犬・猫の高 ナトリウム摂取における
血圧および飲水量の変動 日本小動物獣医学会誌 2010
現時点では、犬に減塩食を与えることによる血圧低下の効果はよくわかっていません。健康な犬であれば、「高血圧にならないように…」と積極的に減塩食を与える理由は乏しいと考えてよいでしょう。
心臓や腎臓に疾患のある犬の場合には、療法食を用いてナトリウムの制限をすることもあります。食事の内容に迷ったら、かかりつけの動物病院で相談することをおすすめします。
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犬の体には塩が必要ということをお伝えしましたが、不必要にたくさんの塩を与えてよいということはありません。言うまでもないことですが、犬が食べてはいけないものを食べた時に「塩や塩水を多量に飲ませて吐かせる」といったような与え方は有害であり、絶対にしてはいけません。愛犬には必要な塩分を必要なだけ、とらせてあげることが重要です。
「総合栄養食」と記載されているドッグフードを与えている場合は、それ以上塩を添加する必要がありません。総合栄養食とは、それと水を与えているだけで、犬の体に必要な栄養がバランス良く、過不足なく摂取できるように計算されて作られたドッグフードです。そのため塩や塩を含んだ食材を加えてしまうと、必要以上の塩分を摂取することになってしまいます。
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総合栄養食に加えて、おやつやトッピングを与えるのであれば、塩は加えないようにしてください。調理をする際には味付けをせず、素材の味のままで与えます。味付けをすると、塩そのものを与えているつもりでなくても、知らず知らずのうちに塩分過多になっているかもしれません。
本来、栄養バランスと栄養素の量という観点から言うと、総合栄養食を与えているのであればトッピングやおやつは必要ありません。しかし、愛犬の気分転換やご褒美として、トッピングやおやつをごくたまに、少量与えるのであれば大きな問題はないでしょう。犬を含めた健康な動物の体には、「恒常性の維持」といって塩分などが体にとって最適な濃度になるように調節する機能が備わっています。体の持つ調節機能で補える程度の摂取量の変動であれば、大きな問題は起こりません。目安としては必要なカロリーの10%程度の量を上限に、良質な犬用のおやつやトッピングを味付けなしで与えるようにしてください。
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愛犬に総合栄養食ではなく手作り食を与えている場合は、適切な分量の食塩を加える必要があります。犬に塩分を与えてはいけないと誤解し、一切食塩を加えない食事を続けていると、低ナトリウム血症を起こすおそれがあります。もちろん低ナトリウム血症が続くことは体調不良の原因になります。
犬の健やかな体作りを手作り食100%でこなすというのは、専門的な知識が必要なうえ、細かな食材の計量が欠かせず、かなり難易度の高いことです。手作り食を与えたい場合は、ごくたまにお誕生日やクリスマスのようなイベントのときの一食だけなど、などと限定しておくのがチャレンジしやすいでしょう。
最近では、総合栄養食の基準を満たす愛犬用の手作り食のレシピを考えてくれるサービスもあります。専門的な知識を持たない方が、毎日の愛犬のごはんを手作り食にするのであれば、そういった便利なサービスを活用すると安心です。
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「犬に塩を与えてはいけない」というのは、過剰な塩分摂取にならないようにしましょうという意味です。一切の塩分が不要というわけではありません。愛犬の健康を損ねないように適量の塩分を摂取して、健やかな毎日を過ごしましょう。
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こいぬすてっぷに所属している獣医師チーム。臨床経験が豊富な獣医師により構成されています。獣医療の知識や経験を生かし、子犬育て、しつけに関わる正しい知識をわかりやすくお届けしていきます。
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