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犬が噛むのを直したい。必要なのはしつけ?それとも…?

   2019/06/03

愛犬の噛み癖は飼い主にとって大きな悩みの種。子犬の時期の甘噛みならば成長とともに解決するケースがよくあります。その一方、成犬になっても噛み癖が続いている場合は深刻です。成犬の噛み癖は、重大な事故に繋がってしまうことがあるからです。噛み癖をなんとかしたいと考える飼い主さんの多くは「しつけが悪かったの…?」と自分を責めてしまいがちですが、犬の噛み癖は決してしつけが悪かったからではありません。まずは冷静に状況を見極め、愛犬が噛む原因と対処法を探ることが大切です。そのうえで、愛犬と毎日笑顔で過ごすための、愛犬との暮らし方について知っておきましょう。

噛む犬のしつけの前に…【安全のための注意】

噛みつく前に威嚇する犬
安全を守ることがとにかく大事

噛む犬のしつけを考える前に、愛犬と飼い主さんの安全のために非常に重要なことがあります。

大けがをしかねない噛み癖は、ためらわずに専門家の手を借りること

  • 噛まれたところから血が出るほどに強く噛む
  • 愛犬が噛むのが怖くて、愛犬とリラックスして触れ合うことができない
  • 高齢者や子供に噛みつく

すでにこのような状況になっている場合は、深刻な問題が起こってしまうリスクが非常に高い状態。飼い主さん自身だけで何とかしようとするのではなく、必ず専門家に相談しましょう。見よう見まねで対処していては、かえって事態が悪化し、重大な事故を起こしてしまう可能性があります。

少しでも不安に感じる場合は、ためらわずにプロの手を借りることをおすすめします。

動物病院への相談もひとつの方法

「犬が噛む」という相談で動物病院?と不思議に思った方もいるかもしれません。でも、犬の噛み癖について相談する先として、動物病院も選択肢のひとつになることをぜひ知っておいてください。

「別に具合が悪そうなわけではないし、健康そうに見えるのに、動物病院へ行っていいものなの?」と思うかもしれませんが、心配は無用です。噛み癖の原因のひとつとして、健康上の問題が隠れているケースもあります。また、「行動診療」といって、噛み癖を含めた深刻な問題行動の治療にあたる専門診療を行う獣医師への紹介を受けられるケースもあります。

信頼できるトレーナーさんへ相談するのもひとつの選択肢ですし、どこに相談すればいいのかわからない…とお悩みの場合には、まずはかかりつけの動物病院で相談してみるとよいでしょう。

犬が噛むのをしつけで直したい…?

噛む前に威嚇の表情をする犬
噛むのはしつけの問題だけでないことがほとんど

成犬のペットが噛むというのは、重大な事故を引き起こす可能性があります。それに、愛犬との暮らしが楽しいものではなくなってしまうおそれもあります。

だからこそ、今すぐなんとかしたい!と思う方も多いのではないでしょうか。また、しつけや世話のどこが悪かったのかと思い返してみる飼い主さんも多いことでしょう。しかし、犬が噛むというのはしつけだけの問題ではないケースが多いのです。

遺伝的に何かしらの原因がある場合や、子犬の早い時期に母犬と離れたことで起こるケース、社会化期に人や犬との関わりが乏しかった場合、脳や神経に何かしらの問題を抱えていることなどが噛む原因として考えられます。それだけではありません。体調が優れないときやケガをしているときなどは、体に触れられたくないという理由で噛んでしまうこともあります。

噛む犬でお悩みの方は、しつけの方法ではなく、犬が噛む理由を考えるようにしてください。理由を考えることなく、噛む犬をなんとかしつけようと、犬が噛んだときに体罰を与えたり、大きな声でひどく叱ったりすることは、絶対に噛み癖の解決にはつながりません。むしろ、飼い主さんと愛犬の信頼関係に悪影響を及ぼします。愛犬の噛み癖を治そうとしたしつけで、かえって噛み癖を悪化させてしまう可能性もあるのです。

どんな犬でもあっという間に噛まなくなるような魔法のようなしつけの方法はないと考えておきましょう。

まずは愛犬の生活環境を整えることから

幸せな生活を送っている犬と飼い主
しつけの前に幸せな暮らしを送らせることが大事

愛犬は幸せで心身ともに満たされた暮らしを送れていますか?

  • 飢えや渇きからの解放
  • 不快からの解放
  • 苦痛や疾病、怪我からの解放
  • 恐れや苦悩からの解放
  • 生得的行動(生まれつき備わっている行動)の発現

これらをきちんと実現させてはじめて、犬を含めた動物は幸せに暮らすことが可能となります。つまり、すべての動物の飼い主は、これらの条件を満たしてあげる義務があるのです。

たとえば、健康の問題がある状態は、「苦痛や疾病、怪我からの解放」が満たされている状態とは言えません。また、恐怖などの強いストレスにさらされている時は「恐れや苦悩からの解放」が満たされていない状態。こういった状態では、噛み癖を直すどころか、しつけを行うことなどとうていできないのです。

しつけでは絶対に直せない噛み癖

  • 脳以外の身体の病気が原因で噛む場合
  • 脳の機能の異常が原因で噛む場合

これらは、しつけでは直せない噛み癖の代表的なものです。犬に健康上の問題や、脳の機能の異常がある場合、必要なことはしつけではありません。きちんと動物病院に連れて行き、診断、治療を受けさせてあげることです。

もちろん、これらの異常は見た目だけではわからないことも少なくありません。ですから、愛犬の攻撃行動に悩んだら、まずは動物病院を受診し、病気がないか、脳の機能に異常がないかをチェックしてもらう必要があるのです。

①脳以外の身体の病気が原因で噛む場合

犬の攻撃行動には、うなる・吠える・噛むなどの行動がありますが、これらは、犬が病気や体の不調のときにとる行動のひとつでもあります。

じっとしているときでも痛みを感じる病気やケガの場合、飼い主が痛みの存在を知らないがために、「何もしていないのに突然愛犬が噛む」と判断してしまっている場合があります。
犬が痛みを感じているのに、それを無視して無理やり噛まないようにしつけようとすることは、動物福祉に反するだけでなく、まったく効果がないしつけだと言えるでしょう。

身体の病気が原因で愛犬が噛む場合には、痛みや違和感、体の不調などが治まれば自然と噛むこともなくなります。急に噛むようになったなど、いつもと変わった様子が見られる場合は、早めに動物病院を受診して、適切な診断と治療を受けることをおすすめします。

ただし、治療で嫌な思いや痛い思い、怖い思いをした場合は、それらの記憶が新たな噛み癖となることもあるのでご注意を。日ごろから信頼できる獣医師を見つけておくと安心です。

②脳の機能の異常が原因で噛む場合

強いストレスを感じると気性が荒くなったり、人当たりが悪くなってしまうという人も少なくありません。犬も人と同じ。持続的なストレスを受けている場合、感情や行動を正常にコントロールできなくなることがあります。

愛犬が強いストレスにさらされていないか、改めて見直してみましょう。また、てんかんや認知症をはじめとした脳の疾患が原因で噛むなどの攻撃行動が起こるケースがあることも分かってきています。

何からの原因で脳が長時間強いストレスを感じている場合、攻撃行動を治すためには、愛犬をストレスの原因から解放してあげる必要があります。また、脳の機能の検査の結果、異常が見つかれば、適切な治療を受けることで噛み癖の改善の可能性があります。こういった場合もやはり、無理やりしつけでなんとかしようとすることは、意味がないのです

脳への長期に渡るストレスは、噛む以外にも体の不調に繋がることがよくあります。ためらわずに早めに動物病院でチェックしてもらいましょう。

噛む犬との暮らし方と解決方法

人に向かって噛もうとする犬
愛犬と飼い主が少しでも暮らしやすくなるために…

噛む犬との生活をハードに感じる飼い主さんも少なくありません。しかし、犬は本来穏やかで平和的な生活をする動物。すぐに解決することは難しくても、少しずつ暮らしやすくしていくことはできるはずです。

まずは専門家に脳や体の異常の有無を見極めてもらう

まずは、心身に問題がないかの判断を仰ぐことをおすすめします。経験豊富なトレーナーに相談したり、動物病院へ相談したりという方法があります。

脳や体に異常がないかの判断には、獣医師による診察が必要でしょう。日本獣医動物行動研究会は「獣医行動診療科認定医」制度を設けています。まだ専門家の数は多くありませんが、近くに問題行動に対する診療を行っている獣医師がいないか、探してみても良いでしょう。もちろん、かかりつけの動物病院で相談してもOKです。犬の心身に何かしらトラブルがある場合は、適切に治療をすることで、犬の攻撃行動が減る可能性が高いでしょう。

獣医行動診療科認定医や行動診療を実施している動物病院での診察と治療

噛む動機を見つける

健康上の問題がなければ、犬がどうして噛むのかという犬の気持ちを考えてみます。

犬の気持ちを理解するヒントになるのが、噛むときの行動、噛むきっかけ、噛む時間帯やその場に居合わせている人物、タイミング、噛んだあと飼い主さんの行動などです。犬が噛むたびに細かくチェックして、リストアップしてみると、犬が噛むヒントが見えてきます。

動機としてよくあるもの

  • 人に対する恐怖心(手を振り上げられる、叩かれる、大声で怒られる、蹴られるなどの経験がある場合・社会化が不十分な場合など)
  • 他の犬への恐怖心(体格差や年齢差がある犬への恐怖心、社会化が不十分な場合など)
  • フードやおもちゃなどを守る(大切なものを取られたくないという気持ち)
  • 触られるのが嫌(足の裏などデリケートな場所を触られることに慣れていない)
  • ブラッシングが嫌(痛い思いをした経験がある場合、我慢させる時間が長すぎる場合など)
  • 抱っこが嫌(足が地面に付かない場所が怖い、寝ている居場所を取られたくない、そもそも体を触られることが苦手な場合など)

まずは噛む状況を避けられる限り避ける

寝床を守って噛もうとする犬の足
「噛む」状況を作らないように心がける

噛む犬が、どういうときに噛むことが多いのかが把握できたら、できるだけ犬が攻撃的にならない環境を作りましょう。実はここでも、大事なことはしつけではありません。「噛まないようにするしつけ」ではなく、飼い主の働きがけで「噛んでしまうような状況を作らないようにする」ことがポイントなのです

たとえば、抱っこが嫌な犬ならば、できるだけ抱っこしないようにしましょう。また、フードを守ろうとして噛みつくのであれば、食事中に手を近づけるような行為はしないようにします。食べ終わって、犬が食器から離れてから近づくようにしましょう。 また、寝床を守ろうとして噛む犬ならば、寝床にいる間は決して手を出さないようにしてください。

このように、愛犬が噛むきっかけとなる行動がわかっているのであれば、その事柄からできる限り犬を遠ざけてください

さらに、愛犬の表情をよく見ることも大事なこと。噛む前に見せる威嚇の表情や恐怖を感じている行動を見逃さず、「噛む」という行動に出る前に、状況を変えてあげることで、愛犬が「噛まずに済む」ようにしてあげましょう。

恐怖や怒りを感じて、噛む前に表情を変える犬
「噛むぞ!」のサインに注意。噛む前に気をそらしてあげよう。

最優先することは、犬の安心と人の安全。特に、愛犬に対して恐怖を感じるようになってしまっている場合には、飼い主さんと愛犬の関係性を再構築することからスタートです。「噛むという行動に出なくても、 怖い気持ちや嫌な気持ちに気づいてもらえる!」と愛犬が理解できれば、噛むという行動に出る頻度は少しずつ減ってきてくれるはずです。

生活するうえで必要な「しつけ」は、プロの力を借りる

人やほかの犬に慣れること、体に触れることなど、生活するうえでどうしても必要なことは、克服できるようにしつけやトレーニングをしていかなくてはなりません。

また、有害なものや危険なものを犬が口に入れたとき、飼い主さんはどうしてもそれを犬から取らなければいけません。しかし、持ち物を取られることに対して噛む犬の場合は、飼い主さんが取り上げようとすると、犬に噛まれてしまう可能性があります。

こういった、「生活に必要なこと、でも、犬が苦手なこと」には、ゆっくりゆっくり、慎重にトレーニングを積み重ねることで慣れていってもらいましょう。
すでに人を困らせるほどの噛み癖がついてしまっている犬を噛まないような犬に育てていくため、これらのトレーニングには専門家のサポートを受けることをおすすめします

「トレーナーさんやしつけ教室はどこがいいのかよくわからない…」と思うのであれば、かかりつけの動物病院のスタッフに相談してみるのもひとつの方法。しつけを得意とするスタッフが力になってくれるはずですよ。特に、パピークラスやしつけ教室を院内で開催しているような病院であれば、しつけに詳しいスタッフがいたり、「しつけインストラクター」や「ドッグトレーナー」などの民間資格を持つスタッフがいたりする可能性が高いでしょう

飼い主さんが、無理をしてしつけようとすると、ケガをしてしまう危険があります。飼い主さんと愛犬のためにも、専門家のサポートはためらわず活用していきましょう。

成犬の噛み癖のしつけ、とにかく無理は禁物!

噛み癖を克服して安心して抱かれる犬
ゆっくり時間をかけて、お互いに安心できる関係を築こう

成犬になってからの噛み癖を治すのは、しつけだけでは難しいときが少なくありません。体や脳の機能にトラブルを抱えていないか診察をうけ、必要であれば治療をすすめていきましょう。噛む犬との生活は、大きな事故に繋がってしまう危険があります。飼い主さんだけで対処しようとせず、プロの手を借りながら、徐々に噛まない犬に育てていくことが大切です。

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