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愛犬との避難のために備えておくべき「3ヶ条」とは?

   2018/11/21

地震や豪雨災害、土砂崩れなど、日本列島は近年、様々な大きな災害に見舞われました。もしもの時は、自分と家族の命を守ることが先決。そして、その命の中には愛犬の命も含まれます。愛犬家のみなさんは「人間の避難」だけでなく、「愛犬を連れての避難」について考えておかなくてはならないのです。「犬のための防災グッズ」を準備するだけでは不十分。「避難所まで犬と安全に避難し、さらに、避難した先で周囲に迷惑をかけることなく犬が過ごせること」がポイントです。そのためには日ごろからどのような準備をしておけばよいのでしょうか。先日 こいぬすてっぷで行った 愛犬の防災対策に関するアンケートでも、多くの飼主さんから「愛犬との避難について不安に感じている」との回答がありました。今回は、万一のため、愛犬との避難が必要になった時のために備えておくべきことについてご紹介します。

避難のために備えが必要な犬

「一緒に避難を!」災害時は愛犬との同行避難が基本

東日本大震災の際は、自宅に愛犬を残した状態での緊急避難を余儀なくされてしまうケースが多数ありました。そしてその時の教訓をもとに、現在、日本では、「災害時に飼い主の責任のもとで、愛犬を連れて避難所まで移動する『同行避難』」が推進されています。

  • 飼い主が避難している間に行方不明になった犬の捜索と保護に大変な労力を要する
  • 避難先から自宅に戻ったら、犬が負傷、衰弱、または死亡している
  • 飼い主不在の間に犬が放浪し、人に危害を与えたり公衆衛生上の問題が発生する

愛犬を自宅に残したままの避難では、こういったことが心配されます。そのため、現在では、原則として愛犬と一緒に避難所へと移動する「同行避難」が勧められているのです。それに伴い、多くの自治体が避難所でのペットの受け入れ体制の整備を徐々に進めてきています。

「同行避難」は、避難所での同居を意味しているわけではない!

同行避難のためキャリーバッグに入る犬

「同行避難」について、必ず知っておかなくてはならないことがあります。
それは、「同行避難」をしたからといって、必ずしも飼い主と犬が避難所の同じスペースで一緒に過ごせるとは限らないということ。
「同行避難」とは、「愛犬とともに安全な場所まで移動すること」を意味するのであり、避難所の同じスペースで避難生活を送ることを意味しているわけではないのです。

いわゆる「避難所」では、動物が苦手な人や動物にアレルギーがある人、幼い子ども等に配慮して、ペットと人の居住空間は別になっていることが多いのです。
そのため、原則として、犬は決められたペット専用の係留所やペット専用スペースでクレートやキャリーバッグの中で過ごすことになります。

ただし、自治体や避難所によっては、ペット同伴避難者用のスペースを設けてあり、犬と一緒に避難生活を送ることができるケースもあります。
避難所でのペットの過ごし方のルールを、あらかじめ自治体のサイトで確認したり、直接問い合わせたりして、いざという時の備えを考えておきましょう。

※犬と避難したときの過ごし方についてはこちらの記事でご紹介しています。
【災害への備え】愛犬と避難した時の実際の過ごし方とは?<避難所の事例も紹介>

犬との避難のための備え その1 社会化をしっかりと

避難所では、必ずしも飼い主がそばにいられるとは限りません。
避難したときに犬が落ち着いて過ごせるかどうかのポイントになるのは、犬の社会化がきちんとできているかどうかです。

避難が必要になった時のため、普段から人や動物に慣らしておく

災害で避難した犬は、見知らぬ人や動物に囲まれた空間で過ごさなければなりません。
状況によっては一時的に見知らぬ場所へ預けられることもありますし、迷子になって保護されることも。
つまり、普段とは違い、避難が必要な場合には、飼い主以外の誰かが世話をするかもしれない状況にあるのです。

避難しても落ち着いて過ごせるくらい社会化ができている犬

犬にとっては、ただでさえとても不安な状況。
愛犬の社会化が不十分だと、犬は必要以上に怯えることになり、騒いだり暴れたりと周囲に迷惑をかけることも。さらには人や動物を咬んでしまうといったトラブルを引き起こす可能性もあります。

そして、社会化ができていない犬にとっては、普段とは違う環境の中で過ごす恐怖や不安といったストレスが、さらに強いものになってしまうことを忘れるべきではありません。

愛犬の不安を少しでも軽減するためにも、また、周囲に少しでも迷惑をかけないためにも、きちんと社会化させておくことは必要なことなのです。

色々な音が聞こえても動じない犬に

「いろいろな音に慣れる」という社会化も大切です。音に慣れていない犬は、自宅(=慣れた場所)から出ると、音に対して必要以上に敏感になりがち。

避難所は未知の音で溢れた空間。つまり、犬が相当なストレスにさらされてしまう可能性のある環境です。
いざ避難が必要になった時のためにも、普段から様々な音に囲まれる機会を作ってあげましょう。
知らない音が聞こえてきても簡単には動じないように慣らしておくと、いざという時のストレスをかなりおさえてあげられるはずです。

避難していても音に慣れているため安心して眠ることができる犬

犬との避難への備え その2 日々のしつけを積み重ねる

犬を連れて避難した際、気になることのひとつは周囲に迷惑をかける行動。
ただでさえ、災害によって誰もが不安やストレスを抱えた状態。ちょっとしたことがトラブルにつながっても不思議ではありません。
また、犬も災害といういつもと違った環境で、普段できていたことができなくなってしまうことも考えられます。

だからこそ、周囲から愛犬の存在を温かい目で見守ってもらうために、また、少しでも気持ちよく生活を送るために、日々の丁寧なしつけが欠かせないのです。
日ごろからじっくり丁寧にしつけを積み重ねていくことは決して無駄にならず、いざというときにこそ活かされます。
ここでは、避難が必要になった時のために身に着けておきたいしつけをいくつかご紹介します。

クレートトレーニング

避難に役立つクレートトレーニングができている犬

避難所では、基本的に犬はケージやクレートの中で過ごします。
普段から入り慣れていない犬を無理やり閉じ込めてしまうと、不安からパニックになったり大声で吠えたりするのは自然なこと。

普段からクレートやケージに入り慣れていて、クレートが愛犬にとって安心できる場所になっていれば、避難所でも落ち着きを取り戻しやすくなるでしょう。

※避難をしたときに大切なクレートトレーニングについてはこちらの記事でご紹介しています。
犬にハウスのしつけは絶対必要!ハウスが役立つ場面としつけの方法とは?

トイレ

トイレシーツの上で排泄できないと、避難した先であちこちにオシッコやウンチをしてしまうかもしれません。
避難所のように大勢の人や多数のペットが共同で生活する空間では、衛生面の管理はなによりも重要。

そんな場所で所かまわず排泄してしまうようでは、たとえ周囲の人が犬好きでも間違いなく嫌がられてしまいますよね…。また、散歩に行けずに排泄をずっと我慢してしまうことは、愛犬の健康を害してしまうことにつながります。
とは言え、普段は散歩のときにしか排泄したことがない犬に、いきなりトイレシーツでの排泄をさせようとしても難しいのは当たりまえのこと。
いざというときに慌てないよう、普段からトイレトレーニングをしておくことが大切です。

「待て」と「おいで」

避難したときにもマテができるようにしつけられている犬

災害時は、普段はおとなしい犬であっても、パニックで急に走り出す…といった行動をするかもしれません。

「待て」と、「おいで」がしつけられていると、逃走しようとした犬を保護するのに役立つほか、危険な場所に近寄ろうとしている愛犬を制止することもでき、迷子や事故を未然に防ぎやすくなります。

また、こういったコマンドにきちんと従う犬は見る人に安心感を与えるので、避難所のように不特定多数の人や多数のペットが集まる場所では受け入れてもらいやすくなるでしょう。

※避難が必要になったときに役立つ「待て」「おいで」のしつけについてはこちらの記事でご紹介しています。
【子犬のしつけ】いつでも「待て」ができるようになる4STEPとは?

体中を触られることに慣らしておく

災害時は犬も体調を崩しやすいだけではなく、普段に比べるとケガをする可能性も高くなります。ところが体を触れられ慣れていないと、診察や手当が難しくなり、最悪は手遅れということも…。

こういった理由からも、口の中からシッポの先まで、普段からどこを触っても嫌がらないように慣らしておくことが大切です。

吠え対策

避難に備えて吠え対策をしておきたい犬

犬の鳴き声や騒音は、誰もがストレスにさらされている避難所のような空間で、最も苦情の原因になるもののひとつ。

普段はおとなしい犬も、慣れない環境では不安から吠えてしまいがち。
日ごろから「吠え」への対応をしっかりしておき、「吠えなくてもわかってもらえる」ことを理解させておきましょう。

※避難が必要なときのために身に着けておきたいしつけについてはこちらの記事でもご紹介しています。
非常時でも確実に!災害への準備としての犬のしつけ5選

犬との避難のための備え その3 万全な感染症対策

避難所には、いつもは愛犬が接することのない大勢の人や動物が集まります。
つまり、様々な感染症や病気のリスクが高まる状況とみて間違いありません。しかも、災害、そして避難生活という慣れない状況のせいで免疫力が低下しやすくなっています。

できる限り感染症を防ぐための方法は、日ごろから伝染病予防のワクチンを接種し、さらにはフィラリア症予防とノミ・マダニ対策も確実に実施することです。

万一、避難中に愛犬の体にノミやマダニを見つけたら、放置せずにすぐに対処してください。狭い空間の中ではノミやマダニは蔓延しやすく、周囲に多大な迷惑をかけてしまいます。手元にノミマダニ駆除の薬がない場合には、避難施設の管理者などへ相談するのもひとつの方法でしょう。

※災害などの避難が必要なときに備えた健康管理の大切さについてはこちらの記事でご紹介しています。
愛犬との防災。非常時への準備としての健康管理、4つのポイント

平常時にこそ「愛犬との避難」を考えておこう

災害はいつ襲ってくるかわかりません。だからこそ、愛犬を連れて避難することを前提とした防災計画は、平常時にたてておくべきです。必要な物資を準備しておくことも大切。しかし、普段から愛犬が社会の一員であることを強く意識し、愛犬の健康をきちんと管理し、必要なしつけを行うことこそが、いざという時に最も力を発揮してくれるのではないでしょうか。何も特別なことをしなくてはならないわけではありません。日ごろ、自分が愛犬とどのように過ごしているのかを、ぜひ一度見直して、防災につなげてみてください。

東京大学農学部 獣医学専修を卒業後、大阪の高度獣医二次診療病院に勤務の後、渡米しミシガン州立大学、カリフォルニア大学 ディビス校にて、整形外科・再生医療の研究などに携わる。帰国後は、アメリカでの経験を活かし、川村動物病院の院長として、より良い地域医療の普及に邁進中。

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