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子犬が吐く…早くよくなるために知っておきたい「観察と対応のポイント」とは?【獣医師監修】

   2018/09/19

小さな子犬が食べたものを吐く…そんな姿を見ると、大丈夫かな、早くよくなってほしいな…という気持ちになりますよね。でも実は、子犬が吐くというのはわりとよくあることで、心配ないケースも多々あります。その一方、病気で吐いており、治療が遅れると深刻な事態になるケースがあるのも事実。子犬が吐く、そんなときには、まずは落ち着いて子犬の様子を見てあげてください。今回は、子犬が吐くときに適切な行動をとるために知っておきたい、吐いている子犬の観察と対応のポイントを紹介します。あわてず、落ち着いて子犬の様子を確認し、対応してあげてくださいね。

元気がなく、吐く子犬

子犬が吐く…観察が大事。「嘔吐」でないことも?!

「吐く」のは犬によくみられる症状のひとつです。「吐く」というと、一般的には胃に入ったものを口から吐き出す「嘔吐」を想像しがちですが、実は「嘔吐」ではないこともあることをご存知ですか?

子犬が吐く…「嘔吐」によく似た症状「吐出」とは?

飲み込んだものが胃に入る前の食道から逆流して口から吐くことを「吐出」といいます。

吐出を起こす病気は嘔吐を起こす病気とは別であり、治療法も異なります。まれな病気ではありますが、子犬が吐出を起こす先天性疾患も知られています。そのため、「吐く」という症状で来院した子犬を診察する時、獣医師は犬が「嘔吐」をしているのか、それとも「吐出」をしているのかをきちんと把握する必要があるのです。

吐出の場合、多くのケースで食後すぐ、突然ガボッ!と勢いよく口から食べたものを吐くのが特徴です。
食べたものが胃に到達する前に吐くので、吐いた食べ物は未消化で、胃液もほぼ入っていません。食べ物と一緒に、ネバネバした白い泡をたくさん含んでいることもよくあります。また、この場合、犬は吐くとケロっとした様子になり、自分が吐き出したものをまた食べてしまう、ということもよくあります。

吐くけれど嘔吐ではない子犬

子犬が吐く…「嘔吐」の場合は?

一方、嘔吐は、逆流した胃の内容物を口から吐くことを言います。

犬が嘔吐するときには、胃から押し上げられた胃の内容部が、一気に食道を逆流して、口から吐き出されます。
吐く前に犬の腹部の筋肉が何度か収縮し、犬がおなかを上下させるようなしぐさをし、そのあと吐く、というのが一般的です。「ゴボッゴボッ」という音ではっとして愛犬の様子を見たら、「ゲー!」と吐いた、といった流れであることが多いです。
また、吐出とは異なり、吐く前後に吐き気による症状や行動の変化があることもあります。

子犬の嘔吐には、生理的なもの、つまり体の正常な反応で吐く、という心配のない嘔吐も少なくありません。生理的な嘔吐、つまり心配のいらない嘔吐には、空腹で吐く、フードを勢いよく食べすぎたために吐く、などがあります。
その一方で、病的で治療が必要な嘔吐には、胃腸炎(感染性)、中毒、誤食や誤飲、熱中症、アレルギーなどがあります。中でも、激しい下痢を伴って数日のうちに死亡することもあるおそろしいウイルス感染症、パルボウイルス感染症の場合には、速やかに治療を開始するが非常に大切です。

元気がなくて吐く子犬

犬が吐く前に見せる「吐き気」ってどんな症状?

吐く前の不快症状を吐き気といいますが、人と同じように、嘔吐をしている犬ではよく見られます。
犬が吐き気を感じている時には、元気がなくなったり、震えたりします。
そのほか、口のまわりを嘗め回している、よだれがずいぶん多い…といった時にも吐き気を感じている可能性があります。

吐き気を感じたあとに吐く子犬

子犬が吐くときの「観察、対応」にはポイントがある

実際には、子犬が吐くときに、吐出なのか、嘔吐なのか、また、病的な嘔吐なのか心配のいらない嘔吐なのかをご家庭で判断するのは難しいことも少なくありません。だからこそ「子犬が吐く時の観察のポイント」を知っておくことが大切です。

犬が吐くときの様子や、吐いたものなど、飼い主さんだから観察できる細かな情報が正しい診断と適切な治療には重要となってきます。そのうえで、しっかりとした観察をもとに、動物病院を受診するのか、自宅で様子を見るのか、といった対応してあげてください。
ただの嘔吐じゃなさそう?と思ったら、吐いたものを写真に撮っておいたり、愛犬が吐くときの動作を動画に撮影しておいたりして、受診時にもっていくのもひとつです。

子犬が吐く…観察のポイント【どんな様子?】

子犬が吐く時には、ぜひ次の項目をチェックしてください。これらは、動物病院へ子犬を連れていくべきか、自宅で様子を見ていいかの判断に役立つだけでなく、動物病院を受診したときの診断の助けにもなります。診察時に伝えられるようにメモなどで残しておくとよいでしょう。

何を吐く?

  • 胃液?未消化のフード?
  • 白い泡だけで食べ物は含まれていない?
  • 血は混ざっていない? 
    ※吐物に混ざる血は、赤いときもあれば、茶色くコーヒーのように見えることも
  • 植物や異物が混ざっていない?

子犬が吐くときには、吐いたものの量や色を記録しておくことをおすすめします。また、すぐに受診する場合には、子犬が吐いたものを病院に持参すると診断の助けになります。

食事を食べてからどれくらいたってから吐く?

  • 食後まもなく吐く?
  • 水をがぶ飲みしてすぐに吐く?
  • 数時間たって吐く?
  • 吐くタイミングは食事とは関係なさそう?

吐いたあと、子犬はどんな様子?

  • 元気がない?
  • 吐いてしまってからはケロッとしている?
  • 吐いてもまた気持ち悪そうにしている?

吐いたとに寝ている子犬

吐く前の子犬の様子は?

  • そわそわ落ち着きがない?
  • いつもと違った様子、いつもと違った行動をしている?
  • よだれが多い?
  • 口のまわりをなめ回している?

子犬が吐いた回数は?

  • 1回だけ?
  • 数回続けて吐いた?
  • 一日だけ?
  • 何日も続いている?

吐く以外の症状はないか?

  • ぐったりしていない?
  • ぼんやりしていない?
  • 食欲はある?
  • 下痢をしていない?
  • 発熱していない?
  • 痙攣しないか?

その他にも、吐く以外の症状がないか、しっかり観察をしておきましょう。

吐いたあと眠そうにしている子犬

子犬が吐く…対応のポイント【病院?それとも様子見?】

大至急病院に行くべき

  • 発熱している
  • 下痢もしている
  • 血が混ざったものを吐く、茶色いものを吐く
  • ぐったりしている
  • 痙攣している
  • 一日に何度も吐く
  • 異物を誤飲したかもしれない
  • 食欲がない

子犬が吐くときに上記のような症状、経過があるようならば、ためらわずに動物病院を受診してください。一刻を争うケースもありますので、休診時間中であれば、救急病院に連絡をとり、指示を仰ぐようにしましょう。

特に幼い子犬の場合、吐くだけでなく、食欲がなかったり水も飲めなかったりすると、容易に脱水症状を起こしてしまいます。また、子犬は低血糖を起こしやすく、治療が遅れると意識障害を起こして死亡してしまうおそれもあります。速やかに受診をしましょう。

できるだけ早く病院へ

  • 黄色っぽいものを吐く
  • 吐くのが2日以上続いている
  • 痩せてきている

元気があり、嘔吐以外の症状がなくても、吐くという症状が長引いてしまったら、脱水症状をおこしたり、栄養状態が悪化したりというおそれがあります。このような症状がある場合には、できるだけ早く動物病院を受診してください。

二日目も吐く子犬

自宅で様子を見てもOK

  • 吐くのは1回だけで、あとは何事もなかったようにケロッとしていて、元気も食欲もある

子犬がこういった状態であれば、ひとまず自宅で様子を見てもよいでしょう。ただし、いつもよりしっかりと子犬の様子を観察し、少しでも気になる症状が出てくるようならば受診をおすすめします。

吐くけれど元気な犬

子犬が吐いたあと、自宅で様子を見る時は…

一度きり吐いただけで子犬が元気な場合、特に車酔いや食べすぎ、空腹時間が長かったなど、子犬が吐く原因に思い当たることがあるような場合には、ひとまずご家庭で様子をみることもあるでしょう。

食欲があるようならば、食事を与えてみてもかまいませんが、まずは水にふやかしたいつものフードを少量食べさせて様子を見るようにしたほうがよいでしょう。
これは、消化管への負担を和らげること、胃などの消化管への刺激を抑えて嘔吐を繰り返させないことが目的です。たとえ吐いたのが1回であっても、胃や食道の粘膜の損傷があるかもしれません。慎重に子犬の様子を見てあげてくださいね。

吐くけれど食欲がある子犬

もしも様子を見ている間に繰り返し吐く、他の症状が出てくる、といった場合には、治療が必要です。動物病院を受診しましょう。
治療を受けるまで飲食はストップ。ただし、吐いている子犬の絶食時間が続くことは、危険な脱水症状と低血糖を招き、深刻な事態を引き起こします。子犬がくり返し吐く場合には、速やかに動物病院へ連れて行くようにしてください。

子犬が吐く時、まずは落ち着いて愛犬の様子を見てあげて

子犬を家族に迎えてすぐのうちは、環境が変わったストレスや慣れないフードなどで吐くことが少なくありません。とはいえ、子犬が吐くときには、大きな病気のサインであることも事実です。心配ならばためらわずに動物病院で相談をしてください。愛犬の命を守れるのは飼い主さん自身。ぜひ、パニックになったりすることなく、落ち着いて対応してあげてくださいね。

東京大学農学部 獣医学専修を卒業後、大阪の高度獣医二次診療病院に勤務の後、渡米しミシガン州立大学、カリフォルニア大学 ディビス校にて、整形外科・再生医療の研究などに携わる。帰国後は、アメリカでの経験を活かし、川村動物病院の院長として、より良い地域医療の普及に邁進中。

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